空白

そこに描き出すしかないのだもの。

窓のない部屋に心臓が一つ

振り出しに戻る

この問題は

考えに考えて

もう

割り切っていた、

はずなのに

再び

眼前に突き付けられ

泣いてしまったあたしは

結局

何の覚悟も

できていなかったのだろう

「結論なんてないよ」

当たり前だ、と

悟りきった声音で

続けられて

えー、と

不満の声を上げて

何への不満か

振り向いてみたら

そのことばのもつ

正しさ

に、対してだった

人文、文学を研究するとは

そういうことだ

どこまで行っても還元されることは

ない

しかしあたしの

興味のベクトルは

どうしてもこちらにしか

向かない

法学でも

社会学でも

選べたのに

終わりの見えない世界を

望んだのは

誰でもない

あたしだ

論文に

人生を重ね合わせて

泣く、だなんて

馬鹿げてる

でも、ずっとずっと

不安なんだ

就きたい職種が

これといってないこと

ビジョンがいつまでも

曖昧なこと

打ち消せない、劣等感

(これはきっと一生)

時間がないことや

資料がないことを

言い訳にしてしまったことも、

悔いている

もやもやとした自己嫌悪

責めてるわけじゃない、と言われ

自分で責めてるんです、と答えたときの

あなたの

呆れた顔が

今も、くっきり

勝手に覗いた湖の深淵

また足元を掬われてしまった

あたしは、しゃくりあげるように、

泣く

不安はいつも

口に乗せることで

怪物に姿を変える

書いても、打ち込んでも、

あたしにストレートに向かってくることはないが

他人という鏡を通して初めて

実体をともなう

周囲の評価に惑わされて

自分を買い被りすぎていた

自省、自省

あたしのことは誰よりあたしが知ってる

に、決まってる

中途半端な完璧主義者

我儘な凝り性

そのくせ何を差し置いても睡眠

そんなあたしが

何かを仕上げる、という

ことは、だ

せんせいのまえでもあれほど泣いたことはないのにね

よわっているのかな

しっかりしろよ!

しんどいのはあたしひとりじゃ、ないんだから